超高齢化社会を前にして、薬剤師を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。環境の変化に伴い、社会のニーズや求められる役割も変化し、今後のキャリアについて考えることの重要性が高まりつつあります。「薬局長を目指す」「家庭と仕事を両立させたい」「業種転換して違う仕事に挑戦したい」など希望がある場合、大切なのは職場選びです。薬剤師のキャリアは職場によって大きく変わります。
この記事では、職場別の業務内容/身につくスキル/キャリアアップについてご紹介します。それぞれの特徴を踏まえた上で、今後のキャリアを考えていきませんか?
薬剤師が働く職場とは?割合を調査
厚生労働省のデータによると、平成28年12月31日時点で全国の薬剤師数は301,323人。男・116,826人(総数の38.8%)、女・184,497人(同61.2%)と報告されています。
彼らが働く職場を種別に見てみると、薬局の従事者・172,142人(総数の57.1%)、医療施設の従事者・58,044人(同19.3%)、医薬品関係企業の従事者・42,024人(同13.9%)、衛生行政機関又は保健衛生施設の従事者・6,813人(同2.3%)、大学の従事者・5,046人(同1.7%)、その他の従事者・17,233人(同5.7%)と報告されていました。
つまり約6割が薬局で働いているという訳です。さらに、ドラッグストアや病院を合わせると8割を超えます。今後のキャリアを考えるなら、こうした大多数の薬剤師が働いている職場について詳しく知ることが大切ではないでしょうか。
※医療施設の従事者は、病院の従事者・52,145人(同 17.3%)、診療所の従事者・5,899人(同2.0%)という内訳になっています。
【職場別キャリア】調剤薬局
調剤薬局における主な業務は、調剤業務・服薬指導・薬歴管理です。処方箋をもとに調剤し、患者さまの良好な薬物治療をサポートするために服薬指導を行います。患者さまの中には、複数の医療機関を受診して併用薬のある方もいらっしゃるので、薬歴によって服用する薬剤を継続的・網羅的に管理することも必要です。
その他、在宅医療、24時間対応、医療機関との連携、高度薬学管理機能などが必須機能として求められるようになりつつあります。
調剤薬局で身につくスキルは?
医療用医薬品や保険調剤業務の知識を身につけられます。調剤業務に関する知識やスキルを磨きたい方は、調剤薬局がおすすめです。
ただし、調剤薬局の多くは近くの病院やクリニックにあわせて開局しており、それらの規模や科目によっては希望が叶わない場合があります。「無理なく働きたい」「○○科を深く学びたい」など希望があるのなら、近くの病院やクリニックの規模や科目を調べて、適した環境か見極めましょう。
調剤薬局でのキャリアアップは?
【一般薬剤師⇒管理薬剤師(薬局長)⇒エリアマネージャー】といった流れのキャリアアップが一般的です。また、複数店舗を運営する企業であれば、本部社員として薬局全体の運営や新規開局に携わることもあるでしょう。最近では、薬局の外で活躍する在宅薬剤師のキャリアを歩む方もいらっしゃいます。
さらに、自分の薬局を持つために独立する道もあります。「将来的に経営者を目指す」といったキャリアプランも叶えられるでしょう。
調剤薬局で活躍するには
まずは、調剤業務を一通りできるようになる必要があります。医療用医薬品や保険調剤業務知識を身につけることは必須と言えるでしょう。
管理者を目指すのであれば、マナーや接客スキルを含めた”コミュニケーションスキル”を養うことも重要です。さらに、薬局の運営に携わるためには、売上や在庫など数値管理のスキルも求められます。
【職場別キャリア】ドラッグストアの場合
ドラッグストアにおける主な業務は、OTC医薬品・健康食品・衛生用品の販売業務です。要指導医薬品や第一類医薬品の販売は薬剤師だけに認められており、利益に貢献しやすいことから、中心的な業務となります。
その他、医療の専門家として健康相談を受けたり、適切な医療機関への受診を勧めたりと、顧客の健康サポートも重要な役割です。
最近は調剤併設型ドラッグストアも増えており、保険調剤業務にも携われるでしょう。
ドラッグストアで身につくスキルは?
OTC医薬品や健康食品の知識を身につけられます。患者さまの症状に合った医薬品を選ぶことで、提案力も身につくでしょう。さらに、調剤薬局や病院よりも接客業の色合いが強いため、接客スキルや応対スキルも習得できます。
また、調剤併設型ドラッグストアは、医療機関を限定せず処方箋を受ける「面分業」。様々な施設や診療科の処方箋に携わることができ、幅広い領域の知識を身につけられます。
ドラッグストアでのキャリアアップは?
【一般薬剤師⇒管理薬剤師(調剤併設型店舗)⇒店長⇒エリアマネージャー】といった流れのキャリアアップが一般的です。企業規模が大きければ、採用人事・労務管理・教育部門など多様なキャリアを歩めることも特徴でしょう。
ドラッグストアの中には、自社ブランドのOTC医薬品を取り扱う企業も多く、商品開発部門などで活躍する薬剤師もいらっしゃいます。
ドラッグストアで活躍するには
まずは、OTC医薬品の販売スキルや接客スキルを身につけることが必要です。OTC医薬品は種類も多く、新製品も頻繁に発売されていることから、常に新しい知識を身につけなければなりません。
売上目標を達成することが求められる場合は、提案力を高めることも重要です。
また、ドラッグストアには薬剤師以外に、一般従事者や登録販売者、栄養士など様々な職種のスタッフが働いています。管理者を目指すのであれば、コミュニケーションスキルを養うことも大切でしょう。
【職場別キャリア】病院
病院における主な業務は、病棟業務、外来調剤、製剤業務、治験業務、DI業務など多岐にわたります。2016年度の診療報酬改定では特定集中治療室(ICU)等への薬剤師配置に加算が新設されるなど、チーム医療の中で薬剤師にかかる期待は高まっています。
また、薬薬連携の推進も重要な役割のひとつです。病院と院外の薬局の薬剤師が情報を共有し、患者さまが充実した医療を受けることができるように取り組むことも欠かせません。
病院で身につくスキルは?
注射剤や抗がん剤などの、調剤薬局やドラッグストアでは扱うことのできない医薬品の知識を身につけられます。医師のカルテに触れられるので、検査値や処方の意図をはじめ、治験の流れも知ることができます。
また、急性期の患者さまに携わる環境は、医療の最前線でキャリアを積めるでしょう。
病院でのキャリアアップは?
【一般薬剤師⇒薬剤部長(薬局長)】といった流れのキャリアアップが一般的です。
調剤薬局やドラッグストアなどに比べるとキャリアプランの幅は狭く、ポストの空きがなければ昇進も難しいでしょう。『認定薬剤師』や『専門薬剤師』などを取得して専門性を高めることで、病院薬剤師としてステップアップしていきましょう。
病院で活躍するには
上記で述べたように、『認定薬剤師』や『専門薬剤師』などを取得して専門性を高めることがステップアップする方法のひとつです。また、たくさんの症例を積み、学会発表や論文に携わることも、病院薬剤師のキャリアアップには欠かせません。
また、医師や看護師だけでなく、様々なコメディカルと協働することになります。折衝力を高めると薬剤師としてさらに活躍できるようになるでしょう。
収入アップを目指すなら副業もあり
少子高齢化に伴う人手不足や地方の労働力不足などによる社会的要請を背景に、副業を行う労働者が増えてきています。
薬剤師においても、複数の薬局で働いたり、派遣薬剤師として働いたり、医療系ライターなど新しい活躍の場を見出したりと、多様な働き方を実現している方々がいらっしゃいます。
副業を始めることで、収入アップだけでなく、様々なスキルも身につけられるため、これから注目される働き方のひとつでしょう。
幅広い選択肢の中から、自分の働き方に合った職場選びを
この記事では、調剤薬局・ドラッグストア・病院の【職場別の業務内容/身につくスキル/キャリアアップ】についてご紹介しました。なぜ、大多数の薬剤師がいずれかの職場で働いているのかを改めて確認した上で、自身の目標に最適な環境を見つけてくださいね。
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